この住宅はJR山の手線の駅から5分程歩いた一角にある、表通りから少し入ると駅周辺の喧騒や学生達のにぎわいが嘘のように閑静な街並みが展開し、細い道筋の両側には住宅・事務所・マンションなど、さまざまな建物が入り交る場所に位置する。もともと大きな屋敷を区割りしたこの敷地は、左右の隣家と同様の起伏と庭の景観を保っている。お互いに借景し合える環境が実際の敷地面積(220坪)より広く感じさせている。この部分の有効利用と完成されている庭園との関わりがこの住宅の課題であった。 オーナー社長でいらっしゃるクライアントはこの敷地から車で10分程度の所に住まわれており、今回の計画は週末の利用、母の隠居部屋、会社関連のゲストハウスなどを目的として計画され、クライアントからの要望はドラマチックで遊び心にあふれ、生活感のない空間をもとめられた。 はじめに庭ありきなのである。その結果、建物は庭を守るようにそのまわりを取り囲んだ当然ともいえる形状に配置され、それぞれの居室はその庭に開かれている。和室10帖と茶室を離れとして築山に配置し、高齢者への配慮として2階ホールから渡り廊下を11mでブリッジを掛けて起伏に対応した。2階ホールには本格的な鮨カウンターを設け、板前が来てにぎることとなる。軒の出を深くした陰影のある外観と和らいだ室内空間に漂う現代和風の趣。目指したものは遠州好みの「綺麗さび」である。
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