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気持ちよく暮らす――住宅の快適性にはさまざまな側面 があるが、それらは例えば、熱の透過損失や遮音性能など、数値におきかえられているものも少なくない。そして、多くの住宅メーカーがそれらの数値のレベルを競い合い、ユーザーはその数値の善し悪しと価格で住宅を選ばされている。しかし、建築的側面から住宅の真の快適性を考えた時、その中で機能するシステムによって日々心いやされる“操置”としての空間をわれわれは創出しなければならない。
西宮市苦楽園の高台にあるこの敷地からは、晴れた日には大阪湾から神戸の街並みにいたるまでが一望できる。日常の移動、食事、団らんなど、何げない住まい手の行為の中で、四季折々の自然の移り変わりが感じられ、それによって住空間をより豊かにするシステムの構築を目的にこの住宅の設計にとり組んだ。
プライベートスペースを、玄関を中心にTの字に交差させ、2階には共有スペースのみを上げ、すべての動線が吹抜けと一体となった玄関で交わるように空間が構成されている。朝目覚めて2階のリビングに直結された階段をのぼっていくと、ゆっくりと海に連なる街並が見えはじめる。そしてキッチンに立てば、吹抜けごしに海が望めるように小窓が開いている。家族の視線が交差するプランは、それぞれの人の居場所から他の場所が眺められ、住まい手の心のコミュニケーションを育んでいくのである。
住宅の快適性を数値化することになぜか納得できない施主と設計の思考錯誤の共同作業で、「気持ちのいい家」はできあがった。 |
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